プロジェクトに人を増やしたのに、なぜか開発が遅くなる。
そんな不思議な現象に心当たりのあるエンジニアやマネージャーは多いのではないでしょうか。
「人が増えれば速くなる」という直感に反して、現場が混乱することも少なくありません。
私自身、SESとして様々な現場を見てきましたが、チームの人数が増えることでむしろ“進まなくなる”という事態に何度も直面してきました。
そんな時に出会ったのが『人が増えても速くならない ~変化を抱擁せよ~』という一冊です。
この記事では、エンジニアの立場から本書のエッセンスを掘り下げつつ、現場で活かせる実践知を共有していきます。
なぜ“人が多ければ進む”とは限らないのか?
本書の中では、この疑問に明確な答えが提示されています。
・人数が増えても、チーム全体の生産性は直線的には伸びない
・チームが大きくなるほど、調整や情報共有のコストが跳ね上がる
・変化は避けられないものであり、前提として設計すべきもの
・マネージャーの本質的な仕事は、命令ではなく「環境づくり」
・柔軟性のあるチームが、最終的に最も成果を出す
人数を増やすという対処療法ではなく、構造や文化そのものを見直す必要があるという視点が貫かれています。
特に心に残ったのは、「変化を前提にした組織設計」という考え方でした。
多くの現場では、“安定している状態”を維持しようとしがちです。しかし、実際の開発では、メンバーの入れ替わりや仕様変更など、変化は日常茶飯事。
それを例外扱いするのではなく、むしろ前提として組織や仕組みを作っていくべきだという本書の主張に、深く共感しました。
また、「リーダーとは命令する人ではなく、良い環境を整える人」という言葉にもハッとさせられました。
現場での経験と照らし合わせても、この視点は非常に実践的だと感じています。
この本は、次のような方に特におすすめです。
・若手エンジニア:プロジェクトの背景や組織の動き方を学べる
・プロジェクトリーダー:チーム構成や拡大フェーズの設計に悩んでいる人
・スタートアップ経営層:組織を急拡大させたいが、不安を感じている人
・マネージャーや人事担当者:チームがうまく機能しない原因を探している人
ただのチーム論ではなく、現場で活かせる実践的な視点が多く詰まっています。
私がこの本を読んで最も変わったのは、「採用」よりも「仕組み」に目が向くようになったことです。
人が足りないから採用する、という発想をする前に、「今あるチームをどうすれば柔軟に動けるか」を考えるようになりました。
また、日々の業務でも「今起きている変化を受け入れる」ことに意識を向けられるようになり、結果的に余裕を持って動けるようになったと感じています。
エンジニアとして成長したい方にとって、この本は“技術以外の武器”を与えてくれる一冊になると思います。
私にとっても、繰り返し読み返したい本の一つとなりました。
チームの成長に悩んでいる方、人数を増やしても進まない理由に気づきたい方へ。
『人が増えても速くならない ~変化を抱擁せよ~』は、そんなあなたにきっと気づきを与えてくれるはずです。
ぜひ一度、手に取って読んでみてください。